Thursday, September 25, 2025

ディズニー離れ」は本当か

入園者数2700万人と売上絶好調の“ギャップ”を現地から見つめて

2025年の夏、日本列島は観測史上でも屈指の猛暑に見舞われました。東京の街を歩いても、アスファルトが熱を吸い込んで照り返し、外に出るだけで汗が噴き出すほどです。そんな状況下で、観光客として東京ディズニーリゾートを訪れると、まさに「楽しい夢の国」と「猛暑の現実」とがせめぎ合う奇妙な体験を味わうことになります。

しかし、観光の視点で言えばもっと興味深いのは「ディズニー離れ」という言葉が一人歩きしている現状です。入園者数はコロナ前のピークに比べれば確かに減っていますが、現場に足を運ぶと「本当に離れが起きているのか?」と首をかしげる光景が広がっています。

数字に現れる「減少」と「絶好調」の二面性

オリエンタルランドの決算資料によると、2023年度から2024年度にかけての入園者数はおよそ2750万人で横ばい。コロナ前の3000万人超えに比べれば確かに減少しています。観光客としては「やっぱり人気が落ちたのかな」と感じても無理はありません。

ところが、リゾート全体の売上を見れば、むしろ過去最高水準。ゲスト一人あたりの消費額が大幅に伸び、ディズニーホテルも好調です。実際、私が宿泊したアンバサダーホテルのレストランは、平日でも予約が埋まり、外国人観光客も目立ちました。

つまり、入園者数は減っているのに売上は伸びている。ここに観光客の体感と数字のギャップが存在しているのです。

空いているディズニー」は本当に空いているのか?

観光客の視点から最も気になるのは、「混雑具合」です。コロナ禍で訪れた人なら分かるでしょうが、かつての「長蛇の列に並ぶディズニー」とは違い、快適にアトラクションを楽しめる期間がありました。私自身、2021年に訪れた際、スペース・マウンテンに30分も待たずに2回連続で乗れた経験は衝撃的でした。

この“理想的な空き具合”を体験した観光客が、再び通常の混雑に戻ったときに「昔ほど快適じゃない」と感じてしまうのです。

さらに、入園者数は戦略的に制限されており、あえてコロナ前水準には戻していません。これは「ゲスト体験価値の向上」を掲げる経営方針によるものです。つまり、少数精鋭でより濃厚に楽しんでもらう方針。ところが観光客の立場からすると、「人が減っている=人気が落ちた」という誤解につながっているのです。

観光客から見えるディズニーの“贅沢化”

現地に行ってまず気づくのは、チケット価格やグッズ価格の上昇です。2025年現在、1デーパスポートは時期によっては1万円を超え、パーク内の食事も決して安くありません。私は夏の限定ドリンクを試しましたが、軽いスナックと合わせると2人で3000円近く。観光客としては「高いな」と感じますが、その分商品やサービスのクオリティは確実に上がっています。

また、限定グッズのデザイン性は高く、特に海外からの観光客には人気です。私がショップを覗いたとき、中国やタイから来ている観光客が爆買いしている光景を目にしました。入園者数は抑えていても、一人あたりの消費額が伸びているのは、まさにこうした光景に表れているのです。

USJとの比較で見える「違い」

大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)も訪れた経験がありますが、USJは新しいアトラクションの投入サイクルが早く、攻めの姿勢を感じます。特に「スーパー・ニンテンドー・ワールド」は海外観光客に大人気で、SNS映えを強く意識した空間づくりが特徴です。

一方でディズニーは「世界観の完成度」で勝負している印象です。ランドのシンデレラ城前に立ったときの壮大さ、シーで夜景を眺めたときのロマンチックさは他に代えがたいものがあります。観光客としては「混雑や価格」で一歩引く気持ちがある一方、「ここでしか体験できない」という魅力に引き戻されるのです。

観光客の声と今後の展望

実際に現地で観光客に話を聞いてみると、意見は二極化していました。

「高くなったけど、やっぱり夢の国は別格。子供の笑顔を見ると来て良かったと思う」(30代・家族連れ)
「混んでいて暑い。チケット代も高いし、以前ほどは行かなくなった」(20代・カップル)

この声の分かれ目は「価格」と「混雑」です。しかし、裏を返せば「高いけどまた来たくなる」体験を提供できているのも事実。これはオリエンタルランドの戦略通りとも言えます。

今後は新エリア「ファンタジースプリングス」が本格稼働し、世界的にも注目を集めるでしょう。観光客としてはさらに高価格化が進む懸念もありますが、それでも「一度は行ってみたい」という気持ちを刺激する存在であり続けることは間違いありません。

結論:観光客が感じる“ギャップ”こそディズニーの現実

「ディズニー離れ」という言葉が広がる一方、現地に足を運ぶと活気と熱気に満ちています。確かに入園者数は抑えられ、混雑も昔とは違います。しかし、その分一人ひとりの滞在時間は濃厚で、消費額も大きい。

観光客として感じるのは、「ディズニーは縮小しているのではなく、贅沢化している」ということです。つまり、かつての“みんなのテーマパーク”から、“特別な体験を求める人のためのリゾート”へと変貌しているのです。

この変化をどう受け止めるかは観光客次第ですが、少なくとも「ディズニー離れ」という言葉だけでは語れない、複雑で面白い現実がそこには広がっています。

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